建築を支える“小さな構造部材”
こんにちは
今月のとりすみコラムを担当します、建築スタッフの東山です。
どうぞよろしくお願いします。
木造建築の現場で、最も多く使われる「釘」。
一見、どれも同じに見えますが、
釘の種類によって建物の強度や安全性が大きく変わることをご存じでしょうか。
今回は、代表的な3種類「N釘・CN釘・NC釘」について、各々の特徴と正しい使い分けを整理します。
N釘 “太め釘”と呼ばれる標準釘
「概要」
N釘(鉄丸くぎ)は、JIS規格(JIS A 5508)に基づいた一般建築用の標準釘です。
軸径が比較的太く、かつ強度が高いため、かつては「太め釘」とも呼ばれていました。
在来工法の木材接合や下地施工、造作工事など、建築現場で最も多用途に使われるベーシックな釘です。
「特徴」
JIS規格品
…寸法・材質が規格化されており、品質が安定。
太め釘としての高い保持力
…木材への食い込みが良く、引抜き抵抗が高い。
汎用性の高さ
…軸組・野地・下地など、あらゆる箇所で使用可能。
「注意点」
N釘はあくまで「一般接合用」であり、構造耐力を担う釘ではありません。
そのため、耐力壁・床合板などの壁倍率を伴う構造部には使用できません。
構造性能を確保する場合は、後述の「CN釘」を選定する必要があります。
CN釘 構造性能を保証された“構造用釘”
「概要」
CN釘(太め鉄丸くぎ)は、「Construction Nail(構造用釘)」の略称です。JIS規格(JIS A 5508)にも基づいています。
建築基準法施行令第46条の告示で定義された、法的に認められた構造用釘です。
主に、構造用合板を張る際や、耐力壁・床・屋根など、建物の骨格部分に使われます。
「特徴」
構造耐力を担保する認定釘
…CN50・CN65・CN75など規格が定められており、設計値に基づく強度計算が可能。
高いせん断・引抜き性能
…N釘より太く、材質も硬く、壁倍率の基準釘として採用。
建築基準法上の信頼性
…告示仕様や構造計算書で前提となる「指定釘」。
「用途例」
構造用合板による耐力壁
床・屋根下地合板の固定
モノコック構造の木造住宅全般 (例:2×4工法)
CN釘は、単なる釘ではなく「構造体の一部」と位置づけられています。
建物の耐震性能を左右する、極めて重要な存在です。


(写真:上がN釘・下がCN釘)
ここで、JIS規格(JIS A 5508)と建築基準法施行令第46条について、簡単に説明します。
JIS A 5508の基本情報
正式名称:JIS A 5508:2009「くぎ」
制定日:1952年9月22日(最新改正:2009年7月20日、確認:2019年10月21日)
対象:主として一般に使用する釘(鉄丸くぎなど)
除外事項:自動くぎ打機用の連結材料や方法は対象外
「主な規定内容」
| 項 目 | 内 容 |
| 種類と記号 | N釘(鉄丸くぎ)、NZ釘(めっき鉄丸くぎ)、CN釘(太目鉄丸くぎ)など |
| 品 質 | 外観、胴部の曲がり、表面処理などの基準を規定 |
| 形状・寸法 | 頭部径、胴部径、長さ、許容差などを明記 |
| 材 料 | 鉄線またはステンレス鋼線 |
| 試験方法 | 外観・形状・寸法・表面処理の確認試験 |
「建築現場での実用例」
N釘(鉄丸くぎ)は、木造軸組工法で最も一般的に使われる釘です。
「N50」などの記号は、釘の長さ(mm)を示します。
JIS適合品であることは、公共建築工事仕様書などで求められる品質保証の根拠となります。
建築基準法施行令第46条
「条文構成と要点」
| 項 | 内 容 |
| 第1項 | 各階の張り間方向・けた行方向に、壁または筋かいを釣合い良く配置すること |
| 第2項 | 構造計算で安全性が確認された場合は除外可能 |
| 第3項 | 火打材や振れ止めの設置義務 |
| 第4項 | 壁量計算の具体的な方法を告示で定める(告示第1100号) |
そして「あれ?どっちやったっけ??」って、名前で迷ってしまう釘がこちらです。
NC釘 混同に注意すべき“仕上げ用釘”
「概要」
NC釘は「Nail Coating(コーティング釘)」の略称で、主に内装仕上げや造作工事に使われる釘です。
頭部が小さく、仕上がりを美しく見せるために設計されています。
名称・見た目がCN釘と似ているため、誤発注や現場で最も誤使用が起こりやすい釘でもあります。
JIS規格ではありません。
「特徴」
頭が小さい
…仕上げ材に凹凸が出にくく、美観に優れる。
細軸タイプ
…木割れを防ぎやすい。
表面処理あり
…防錆・滑り改善のための軽いコーティング。
「注意点」
NC釘は、構造用釘ではありません。
そのため、これを耐力壁や床面に使用すると、
引抜き強度が不足する・せん断強度が小さい・壁倍率を満たせない、といった問題が生じます。
結果的に、地震時や風圧時の耐力低下を引き起こす危険があります。
特に「CN」と「NC」のラベル違いによる施工ミスは、重大な構造不良につながるため、
材料確認を徹底することが重要です。
3種類の比較表
| 種類 | 別称 | 用途 | 規格 | 強度 | 主な使用箇所 | 構造認定 |
| N釘 | 太め釘 | 一般木材接合 | JIS A 5508 | 中 | 下地・軸組・造作 | 無 |
| CN釘 | 構造用釘 | 耐力壁・床合板 | 告示(構造用) | 高 | 構造部(壁・床・屋根) | 有 |
| NC釘 | 仕上げ釘 | 内装・造作 | - | 低 | 仕上げ材・化粧板 | 無 |
構造体に釘を使用するときに、前もって以下のことを把握しておいたほうが良いです。
1) CN釘はJIS A 5508 適合の構造用釘で、法的に構造耐力を担保する釘として認められています。
2) N釘はJIS規格ですが、あくまで「一般接合用」であり、構造耐力を担保する釘ではありません。
3) 告示に基づく構造性能を満たすためには、CN釘または同等性能の釘を使用します。
4) NC釘などJIS未認定品は構造用途に使用不可です。
釘は、見た目は小さくとも、建物の構造安全性を支える重要部材です。
特にN釘とCN釘、そしてNC釘の違いを理解して使い分けることが、
施工品質と耐震性能の両立に直結します。
「たかが釘、されど釘」
現場で正しい知識と意識を持つことが、確かな建築をつくる第一歩です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします。

