木造で柱・梁を現わしにするには
こんにちは
今月のとりすみコラムを担当します、建築スタッフの東山です。
どうぞよろしくお願いします。
大断面集成材など木柄の立派な材料を加工しているとき、
「これ化粧(現し)やったら映えるやろなあ。」と感じて、
工事担当者に聞いてみたら
「いや、これ全部隠れるねん…」という返事に、何度か残念に思った記憶があります。
でもそれは建築物の防耐火性能によって、
柱・梁などの構造体を現しに出来るか否かの基準があることがわかりました。
「木材の燃える速さ」
建築構造の種類として、木造の他にS造(鉄骨造)・RC造(鉄筋コンクリート造)などがあります。
とかく木造は火災に弱いイメージが強いです。
では、実際木材が燃え進むスピード(炭化速度)はというと、わずか0.6~0.8㎜/分といわれています。
これは、木材が燃えると表面に炭化層が形成され内部への酸素供給が絶たれるため、
中心まではなかなか燃えない性質を持っているからです。
ちなみに、火災から10分経過した鉄の強度は約20%まで低下するのに対し、
木材は炭化層の働きにより約80%の強度が保たれているそうです。
これは、鉄が一定の温度を超えると急激に強度が低下する性質を持っているのに対し、
木材は過熱による強度低下が穏やかであることが影響されます。
「耐火構造と準耐火構造」
用途地域・建築物の用途・規模(階数・延べ面積)に応じて、
耐火建築物(建築基準法第2条9号の2)と準耐火建築物(建築基準法第2条9号の3)として定められ、
それぞれ耐火構造、準耐火構造として制限を受けることになります。
ともに火災で建物が倒壊するのを防ぐ構造ですが、
耐火構造は、主要構造部が燃焼することは無く、規定時間を超えても建物は倒壊することはありません。
準耐火構造は、主要構造部は燃えながらも規定された時間より早く倒壊することはありません。
言い換えると、規定時間を超えてから建築物が倒壊することは許されます。
耐火構造と準耐火構造の大きな違いは、
「躯体が燃えずに耐える」のか「躯体が燃えながら規定時間中は耐える」のか、という防火性能の差です。
「木造で柱・梁を現しにするには」
部材を被覆などの加工をせず、
集成材をそのままの状態(防耐火対策をしていない)で現しとして使いたいなら、
準耐火建築物の構造方式を適用しないといけません。
(耐火建築物は主要構造部を被覆しないといけないので)
準耐火建築物は以下のとおり定められています。
・イ準耐火建築物 主要構造部を準耐火構造としたもの
・ロ準耐火建築物1号 外壁を耐火構造として屋根に一定の防火性能をもたせたもの
・ロ準耐火建築物2号 主要構造部を不燃材料等でつくったもの
木造では「イ準耐」が主に用いられており、
その中に主要構造部で現しでつくることができる「燃えしろ設計」があります。
燃えしろ設計の利点として、木部の架構を見せ木造らしさを表現することができ、
更に内装の仕上げにかかるコストや手間を省略することが出来ることなどがあげられます。
「燃えしろ設計」
建築物の木造化・木質化における防耐火規制に見合う性能を得る手段として以下のものがあげられます。
1.木材の断面を大きくする
2.木材を燃えにくくする
3.木材を燃えにくい材料と組み合わせる
燃え代設計は『 1.』のことを指します。
燃えしろとは、燃焼すると想定される寸法を構造上必要な寸法(断面寸法)に”ふかした”部分のことです。
木材を大断面化することで、火災の燃え抜けを防止します。
ただし、燃えしろ設計による準耐火構造ではJAS構造材しか使用できません。
以前は集成材などに限定されていましたが、平成16年に改正された告示[平12建告1358号]で、
含水率15%または20%でJASに適合した製材でも準耐火建築物を建築することが可能となっています。
燃えしろ設計では、燃えしろを省いた有効断面を用いて許容応力度計算を行い、表面部が燃えても構造上
支障のないことを確かめる方法により、木材でも準耐火建築物を建築することも可能になります。
今回は燃えしろ設計によって柱や梁などの木部架構を、被覆無しで現しにできることを紹介いたしました。
我達が携わった建築物を利用される方々に、
木の存在をダイレクトに感じていただくことで、木造の良さを知っていただく。
燃えしろ設計には、建物が建った後にも視覚に訴える優位性があると思います。
特に大断面集成材の存在感は見ごたえがあり、実際の建物を生で観ていただけたら有り難く思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします。