新着情報

これまでと様相が異なる厳しい時代に

「お客様と接した際の感触がこれまでとは全然違う」「契約直前の段階まで行って思い直し、住まいづくりそのものを取りやめるお客様もいる」――年が明けて、工務店や販売店など住宅関係者から、こうした声を聴くことが多くなった。
かなり以前から少子高齢化や、世帯数、人口減などによって新設住宅着工戸数は減少すると予測されてきた。今年はその状況が顕著になりはじめる年かもしれない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが昨年12月にまとめた『2019/2020 年度短期経済見通し』は、「当面、消費増税に伴う駆け込み需要の反動により持家の減少が続く」としたことに加えて、「金融庁が不動産投資向け融資の監視を強化している」ことも踏まえて、貸家も減少が続くとの見込みを示し、2019年度の新設住宅着工戸数を、88.1万戸、2020年度は84.9万戸と減少が続く見通しとした。各調査機関からも、2019年度は90万戸を割り、2020年度もさらに減少が続くとの予測が相次ぐ。
着工戸数の減少の影響は、住宅業界内ではすでに出始めている。中堅ビルダーの倒産に伴って、そこで仕事をしていた大工をビルダー間で奪い合うような状況が、一部でみられるようだ。技術力の高い大工や若くてやる気のある大工ほど、高性能の注文戸建て住宅づくりを堅実に行っている地場工務店が確保する傾向にある。
人材の流動化は大工などの職人だけではない。ビルダーの倒産に伴って、そのビルダーと多くの取引をしていた販売店やメーカー等も、事業縮小や倒産などを余儀なくされている。地方金融機関の再編も進んでおり、地方の中小企業も影響を受ける可能性が高い。また、大手企業では、〝黒字リストラ〟も行われている。人手不足が続く住宅・建築業界だが、各事業者の倒産・リストラによって、人材の流動化が始まっている。
人材の確保に関しては、木工事の経験が少ないゼネコンなどが、木造の実績がある工務店のM&Aを狙う例も目立つ。非住宅木造の分野でも、店舗や事務所などの小規模物件であれば木造住宅を建ててきた地場工務店でも比較的スムーズに手掛けることが可能だが、規模が大きくなれば、受注することも困難になる。公共物件であれば資格や手続きなど、これまでと異なる対応が必要になる場合も少なくない。そのため、地場工務店も住宅の仕事が少なくなれば、大手の木造工事の下請けに入るケースも増えるだろう。
そうした延長上に、大手による吸収合併の動きも現れる。また、後継者の問題からM&Aを歓迎する声も少なくない。だが一方で、地域の住まいづくりの持続可能性を考え、小規模零細の工務店同士が支え合うことで打開できる道がないのか模索する動きも出てきている。地場工務店も、工務店同士や地域の販売店などと連携して人材育成に乗り出す事例も増えており、2020年は、人材の確保や育成に向けた積極的な取り組みがさらに期待される。

村地綜合木材株式会社出典

 

あらゆる分野の建築をクリエイト