とりすみコラム

木材自給率はたったの30%(パートⅠ)

日本は国土の7割が森林。でも木材自給率はたったの30%。そのわけは?

 世界では熱帯雨林の減少などの問題が発生し、東京都の面積の約24倍もの森林が毎年消滅しているそうです。ところが、日本の森の面積は約40年間で横ばい。むしろ森林蓄積量は年々増えているそうです。日本の森について考えるサイトによれば、日本の国土のうち約7割が森林。この割合は、先進国のなかでフィンランドに次いで2番目に高いそうです。つまり、日本は世界有数の森林国なのです。このうち約半分が天然林、2割が人工林、その他3割が無立木地(樹木が生立していない林地)や竹林などで構成されているそうです。

 

 しかしながら、日本は有数の木材輸入国でもあります。日本の木材自給率は約3割。使用する木材の約7割を輸入に頼っているのです。日本の人工林は、昭和20~30年代、戦後の復興に必要な木材を確保するために政府が実施した「拡大造林政策」によって増加したそうです。当時の家庭燃料は木炭や薪(まき)が中心。木材は生活に欠かせない存在だったのです。

 

 その後、石油やガスの登場によって木材がエネルギー資源としての役割を果たさなくなった後も建築用材として活用されました。このころには木材自給率は9割以上あったそうです。しかし、木材輸入の自由化によって国産材の価格は高騰。外材の需要が高まり、木材自給率は急速に下降しました。

 

 一方、拡大造林政策は見直されることなく続けられて膨大な人工林が残りました。そして、間伐や伐採などにかける費用を捻出することもできず、林業は衰退していき、森林は手入れがされなくなり、森は健全性を失っていきました。

 途上国の森林減少の原因の一つに燃料問題。日本でも昭和30年代までは都市部でも燃料は薪(まき)や炭だったのです。都市ガス、プロパンガスの登場が薪炭林という燃料供給の場としての森林の存在意義を奪ったのです。あちこちの広葉樹の森が薪として炭として利用されていたのです。

 

 しかし、もう薪として炭として売れなくなったら、広葉樹(コナラなど)がある意味がないのです。木があっても、それらの木からはお金を生み出さないのです。だから、広葉樹を切ってスギやヒノキを植えました。炭にするために伐った以上は、何もしないわけにはいきません。山持、林業に従事する人にある職業病で、「伐ったら植える」病というのがあります。せっかく植えるのなら、お金になる木=スギ・ヒノキになったのです。江戸時代からの積み重ねで、育種技術、造林技術が確立されていましたから。安心して植えられる木だったのです。そして、40年とか50年後に売れることを夢見て。「捕らぬ狸の皮算用」をして、21世紀には伐れると思っていました。なぜなら当時は木材価格が高騰していたから。しかし、結果は、ご存じの通りです。「ヒノキなら銀行に預けるのと同じようなもの。スギは変な投資信託にお金を預けたようなもの。」

 

 木が大きくなるのに40年はかかります。高度経済成長に伴い、インフラが充実、「しかし電柱が足りない!」電柱を作ろうと先人たちは、一生懸命植林しました。電柱を目標に計画を作ったのです。今、見渡せば、まわりに木の電柱はありません。全部コンクリートです。また、枕木は名称の通り、かつては木が使われていました。日本ではクリ、ヒノキ、ヒバなどの耐久性のあるものや、ブナが多く使われ、この他にも堅い広葉樹であるニレやナラも使われていました。現在は、コンクリート枕木が主流のPC枕木です。ちなみにPCとはプレストレスト・コンクリートの略です。

 シロアリに襲われていた電柱にその食害を防ぐのに猛毒のヒ素が注入され、思わぬ公害問題が発生しました。せっかく作った木も電柱用だったので、40年で売れるはずだったのに、売る市場が無くなっていたのです。あと、40年待たないと木が売れません。40年(80年で伐るので)も待つ気力が無くなったのも林業がダメになった要因の一つです。

 

 荒廃した森は山崩れが起こりやすくなるだけでなく、二酸化炭素の吸収能力も低下してしまうという。輸入に頼らず日本の木材を使用することは、森の手入れにもつながり、洪水や土砂災害の防止、さらに二酸化炭素の確保という点からも重要なのです。

 

 こうした事態を踏まえて、農林水産省は「森林・林業再生プラン」を平成21年に策定。10年後の木材自給率50%以上」を目標に掲げています。さらに農林水産省の資料によると、「地球温暖化防止への貢献やコンクリート社会から木の社会への転換を実現するための木材利用の拡大」といった目的もあるようで、単に木材自給率向上を狙うだけの取り組みではないようです。このような行政の取り組みが林業をいかに再生させ、そして日本の森林をどのように形づくっていくのか。そしてそれが私たちの暮らしにどのような変化をもたらすのか…。今後の展開に注目するところです。

あらゆる分野の建築をクリエイト