とりすみコラム

むしこまど、べんがらこうし、いぬばしり

日本古来の町屋風情を映し出す                        

むしこまど、べんがらこうし、いぬばしり

五七五、俳句のような語呂合わせ。

 

【虫籠窓】

 虫籠窓というのは主に漆喰(しっくい)の塗屋造りと呼ばれる町家建築の二階部分に、縦に格子状に開口部を設けた固定窓のことを指します。多くでは漆喰を塗り回され、窓といっても開け閉めできるものではなくささやかな明り取りや通風を目的としたものでありました。基本的に二階建てが禁止されていた江戸時代、貯えのある商家は物置のために二階の屋根裏を活用し、その立上りが段々高くなっていき窓の必要性が生じたのだそうです。虫籠窓も初期のものは楕円形の小さいものが多かったですが、明治の頃のものは矩形の大型のものに変り、その形からも建築年代が大雑把にわかります。

 格子や袖壁・うだつ(防火対策)と並んで、古い町並の風情を色濃く感じさせるものの一つといえます。

 虫籠窓の分布の中心は近畿圏で、中国・四国地方の瀬戸内地域、北陸や東海地方の一部でも見られます。(下の写真は、宇陀松山地区です。)

  

 

【犬矢来】⇒犬走り

犬矢来とは、京都の町屋などにある軒下の防護柵のようなものを指します。犬矢来(いぬやらい)の由来は犬の放尿除けにある、とよく言われますが、生活に根差した実用性も高く、泥棒除けや道路との境界線の役目も果たしているようです。

▲宇陀松山地区(長い犬走り)

カーブを描いた犬矢来。犬矢来には可動式のものも多く、必要のない時は家の中にしまっておくことも出来ます。日本古来の町屋風情を映し出す犬矢来。古い町並みの景観にも見事に溶け込んでいます。

 

【紅殻格子】

ベンガラは土から取れる成分(酸化鉄)で紅殻、弁柄とも呼ばれ語源はインドのベンガル地方より伝来したことからそう呼ばれています。日本の暮らしにも古くから根付いている素材で陶器や漆器、また防虫、防腐の機能性から家屋のベンガラ塗りとしても使用されてきました。ラスコーやアルタミラの洞窟壁画にもみられ旧石器時代から使われた最古の顔料であり古代色です。地球上に一番多く存在する「赤色」は酸化鉄といわれています。人類にとって身近な色であり、土から取れた古代色「ベンガラ」は大地の色であり日本の暮らしを彩る色なのです。

 

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